2009年06月30日

サロマ湖100kmウルトラマラソン 大会当日編

初挑戦のウルトラマラソン、想像していた以上にドラマ満載でした。

十二分に堪能してきましたよ、えぇ、いろんな意味で。


サロマ湖100kmウルトラマラソンは、制限時間が13時間。そのため、スタートが朝5時と非常に早い。これでも、制限時間一杯だと夕方6時になってしまうのだから、仕方が無い。

でも、何が問題って、スタート地点とゴール地点が異なるワンウェイのコースで、宿泊場所は主にゴール地点近くの北見市街だということ。ワンウェイで 100kmのレースと言うことは、コースは途中2つの折り返し部分があるとは言っても、スタート地点までは80kmはゆうに離れている。車でも1時間20 分かかる。今回私がツアーで申し込んだのは、こんなに早朝に遠く離れたスタート地点へ行かなくてはならないので、ホテル目の前から乗れるバスを走らせてくれるツアーのほうが安心して行けると思ったからだ。今回泊まったホテルでは、バスの出発時間は2時50分AM。朝っていうか、深夜?むしろ普通の土日ならこの時間に寝始める人もいそうw 昨晩は夕方7時には就寝したのは、こういう理由。

結局、起床はなんと2時AM。AMを付けておかないと、読んでいるほうが混乱しそうな時間だw

ホテルも、宿泊客の多くがウルトラ参加者のようで、特別に“朝食”を1時半〜3時AMに営業していてくれた。メニューも、炭水化物だったりバナナだったり、マラソン・ランナーが喜びそうな内容で充実。ありがたい!バイキング形式で、好きなものを自由に食べられたのも良かった。


バスには乗り遅れないように玄関先に下りると、バスはほぼ予定通りきっちり到着。ここからはまだ真っ暗な中を1時間強のバスの旅。ゆっくり目を閉じて、体と心を落ち着けていた。


濃霧のスタート会場

さて、予定通り4時10分AM頃、スタート地点の湧別町総合体育館へ到着。


降りたら、思わず「寒っ!!」。周りが真っ白になるくらいの濃霧で、気温も低い。場内アナウンスでは、12℃くらいだとか。バスの中は暖かかったので、長袖シャツ1枚だったのだが、それでは寒過ぎだったので、持って来ていた薄手の長袖ウィンドブレーカーを羽織る。サロマは特にスタートの頃は寒いこともあり、寒さ対策も大事と言われていたのは納得。ウィンドブレーカー持って来ていて良かった。



荷物預け 荷物預け

ここで、トラックに荷物を預ける。


ワンウェイのコースなので、ゴール地点行きのトラックがいるのは普通だが、もう1つ55kmのレストステーション行きのトラックも待っている。荷物預けには専用のビニール袋で預ける必要があり、赤色がレストステーション用、青色がゴール地点用となっている。


レストステーション用は、ツアーの面々でも何も預けない人も少なからずいたが、公式にはウェアやシューズを着替えて、また心機一転走り出して欲しいということみたい。私は、脚の感覚が変わるのは嫌だったので、換えのシューズは用意しなかったが、靴下と上半身のシャツ、それに絆創膏などを入れて預けた。スタート地点では長袖シャツを着ておいて、気温が上がってくる後半は半袖シャツという考えだった。



スタート地点 スタート地点

スタート地点はこんな感じ。


ウルトラ・マラソンとしてはかなり人数が多いらしく、去年よりもさらに人数が増えたそうで、後ろの方で「スタート地点がこんなに混雑する大会になるとは・・・」と、何とも感慨深げな会話が聞こえた。ウルトラで参加者が3,500人ってのはやっぱり凄いんだろうな。


周りからは、「行ってらっしゃ〜い」の声援。それに、「行ってきま〜す」とみんな手を振りながらスタートラインを切って出て行く。私も、号砲から1分ちょい過ぎに、ゆるゆるとスタートを切った。なるほど、ワンウェイだし、100kmもの超ロング・レースだし、まさしく「行ってきます」なのね。


※ サロマ湖100kmウルトラマラソン コース紹介



濃霧の湧別町 濃霧の湧別町

それにしても、霧、霧、霧。


どこまで行っても前は真っ白。真っ白な、どこに連れて行かれるのかも分からないコースに、続々とランナーが消えていくような気がする。


これから先100kmもの長旅、未知のウルトラ・マラソンというものを象徴しているような気がしてならなかった。




走り始めて、すぐに違和感を覚えてしまった。


まず1つは、左足の裏。何だろう、左足の裏全体が地面を踏むたびに微妙に痛む。足底筋膜炎の軽い奴みたいな感覚。スタート直後からこれは嫌だなぁ。レース前 5日間は完全ランオフにしたんだが、逆に休み過ぎて体が鈍ったか?少しくらいは運動しておいたほうが良かったのだろうか?


もう1つは、ウェストポーチ。今回は初ウルトラということもあって、やっぱりいろいろ不安で、ちょっと荷物が多めになってしまった。
  • 長袖ウィンドブレーカー
  • 手袋
  • デジカメ
  • 携帯電話
  • 絆創膏 大小何枚か
  • 黒糖飴 数個
  • ゼリー飲料 数個
  • エンライテン
  • アスリートソルト
  • 胃薬(H2ブロッカー) 1個
  • ポケット・ティッシュ 1 袋
食べ物系はエイドステーションに十二分にあるから、持ってこなくて大丈夫と案内状には書いてあったが、最初で不安だったので、今回はこれくらい入れておいた。が、このウェストポーチが妙に重く感じる。やっぱりデジカメと携帯電話というのはちょっと重かったか・・・。それと、ウェアなどもあり、小さなウェストポーチに入りきらなかったため、ちょっと大き目のポーチを選んでしまったのだが、これが大き過ぎたか、腰でガサガサ揺れる。これも重さを感じてしまう一因だっただろうか?


我慢出来ず、食べ物系は最初のエイドで全部まとめて捨てた。もったいなかったが、止むを得ない。それに、デジカメと携帯電話を手持ちにしてみたり、ウェストポーチを肩からたすきがけにしてみたり、いろいろ工夫してみたが、なかなかいまいち。う〜ん、これ、どうしよう?


ウェストポーチ全体を放棄することも考えたが、デジカメや携帯電話が余計に邪魔になりそうだし・・・。さすがにウィンドブレーカーは捨てたくないし・・・。で、レストステーションに着いたら、携帯電話だけを残して全部預けてしまおうと決めたが、55km地点のレストステーションは遠いんだよなぁ・・・(^^;



10km地点

10km地点を通過。0:55:54


まだまだ元気だが、頭の中では不安で一杯。


レースペースは、周りから散々「フルでサブスリーならウルトラでサブテン行ける!」と言われ続けて、自分もその気になっていたし、葛西臨海公園12時間走で10時間かけて平均6分半/kmのまま走り続けて余力を残して88km走りきったし、歳の鬼あし多摩川 50kmでほぼ5分半/kmを維持したままこちらも十分に余裕を持って走りきれたし、5分半/kmで70kmまでは十分にいけると自信があった。今になってみると、ここに過信があったのかもしれないが・・・。


エイドやレストステーションでの休憩もあり、5分45秒/kmくらいで行けば、サブテンで走りきれるだろうという頭があった。


ちょっと目標ペースより早いかもしれないが、何やら問題はペースでは無い気がしてきた。



竜宮台折り返し 竜宮台折り返し 竜宮台折り返し

最初の竜宮台折り返し。


ここでは先頭のランナーや最後方のランナーたちともすれ違えるので、励みになる。あちこちでブルーのゼッケンを付けた「サロマンブルー」(サロマ湖 100kmウルトラマラソン10回以上完走)やゴールドのゼッケンの「グランドブルー」(20回以上完走)のランナーも見かけて、励みになる。



太鼓の応援

竜宮台では、こんな太鼓の応援にも送られる。


まだまだ序盤、頑張るぞ〜。



20km地点

20km地点通過。0:54:37


ありゃ、ちょっとさすがに速い。ゆっくり目にと意識するだけで、Garminでのペース確認などは極力しないようにしていたのだが、ついつい周りのペースに釣られてしまったかも。でも、5分30〜45秒/kmを念頭に置いていたので、そこまで大きくズレているわけでもないかも。


20kmを通過する頃には、最初に感じていた左足裏の痛みは霧消していた。麻痺しただけなのか、ちょっと運動しない日を続け過ぎて鈍っていたのが解消されたのか。


でも、ウェストポーチから感じる重みは相変わらず。無駄なエネルギー使っていないと良いけど。



30km地点

30km地点通過。0:59:18


20kmを過ぎた頃から、すでに若干疲れを感じて来てしまい、これはサブテン狙うどころじゃないぞと感じ、とりあえず11時間以内完走しようと目標を切り替え、ペースを6分/kmにまで落とす。


この時点でこんなに疲れ感じてちゃヤバイと思うのだが・・・。レストステーションまででもまだ後25kmもある。遠いぜ・・・。



濃霧のサロマ湖畔

このレースはサロマ湖周辺の景観が素晴らしいレースとしても人気があると聞いていたのだが、40kmや50kmになっても、相変わらず周りは濃霧の中。


最初の内は市街地を走ったり田園風景の中を通ったりだったのが、中盤ではサロマ湖畔を走るコースに入るのだが、波打ち際がかろうじて見える程度で、湖の大きさや向こう岸は全く伺い知れない乳白色の世界。


この道はどこまで続く・・・?



50km地点

40km地点は、写真撮り忘れ(^^; あ、チェックポイントだ!と思ってカメラを取り出そうとジタバタしているうちに駆け抜けてしまった。別に止まっても良かったのだろうが。1:01:18


写真は50km地点、ハーフポイント。1:01:58


30〜50kmまではほぼ6分/kmで来ている。途中何回かトイレに寄ったりエイドで立ち止まってパンやバナナなどを頬張ったりしていたから、実際にはもう少し速いんだろうけど。


この頃になると、レストステーションはまだか〜と待ち焦がれるような気持ちになってしまう。それだけ体力的にすでに疲れ始めていたのかも。



レストステーション

全体的にほぼ平坦なこのサロマ湖100kmウルトラマラソンのコースだが、中盤50〜60kmくらいにかけて数回少々のアップダウンがある。そんなにきつい勾配ではないが、全体的にフラットな分、坂が来た〜と感じる。


この坂の中盤55km地点にレストステーションがある。ホテルの敷地いっぱいにテントが並び、写真右側のほうでスタート地点で預けた荷物を受け取り、左側のほうはおにぎりやらドリンクやらのエイドステーション。奥には更衣室があったり、絆創膏や消炎鎮痛剤スプレーを置いた救護所があったり。トイレはホテルの中のちゃんとしたトイレを使える。


私はここで大のほうに寄ったら、さすがに数人行列していて、10分弱待つことに。だが、ここは慌てることなく、足を休める意味も込めてポジティブに考えようと、しっかり用を足しておく。


また、これまで着て来た長袖シャツを脱ぎ、預け入れ荷物に入れておいた半袖シャツに着替え。汗がなくなってすっきり。


さらに、少々股ズレが出来ていたので、救護所で大きな絆創膏を貰って上から貼る。



本当は、ここでUSB外部充電バッテリーを預け入れ荷物から受け取ってウェストポーチに入れ、それをGarmin ForeAthlete 305に接続させて、充電させながら走る計画だった。これなら、バッテリー稼働時間が10時間のFA305でも、11時間〜12時間以上持つはずという考えだった。実際この方法は葛西臨海公園12時間走の時に試し済み。この時は意外と気にならずに走れた。


が、今回は、すでにウェストポーチが重いと感じ続けて走って来たので、さらにバッテリーを追加するのはあり得なかった。むしろ、デジカメもGarminもここで諦め、ウェストポーチ丸ごと預け入れ用ビニールバックの中に押し込んだ。家族や友人・ランナー仲間から励ましのメールが来るはずの携帯電話だけを手に、ウィンドブレーカーを腰に巻いた以外は、一切の荷物を無くして預け直し、再スタート。最初からこの軽装にすべきだったな・・・。




ということで、ここから先はゴールまで写真が無くなるが、60km通過時点で50〜60kmの通過ラップが1:16:13。ランナーズ・アップデートで通過時間・ラップを見ていた家族や友人は、ここですでにタイムが落ちていると思ったようだが、実際にはトイレ待ちや着替え・絆創膏処置などの時間を考えると、 15分までは行かないと思うが、10分強は十分にレストステーションで費やしていたはず。だから、60km地点まではほぼ6分/kmを維持して通過出来ていたはず。自分の感覚では、この辺りではまだ快走中だった。




ウェストポーチを無くして荷物は軽くなったはずだが、一度重くなった体は再び軽くなってくれることは無い。まだここからフルの距離があるのかよと思いながら、すでにかなり疲労感のある体をいたわりながら先へ進む。


スタートから50kmまでは、距離表示が5kmごとにしかなかったが、Garmin ForeAthlete 305で距離は分かるし、気にならなかった。50kmを過ぎて佐呂間町に入ってからは、1kmごとの距離表示に変わった。この辺から足が止まる人も少なくないからということなのだろうが、ちょうど私もGarminを諦めてストップウォッチのみに切り替えた後だったので、大いに助かった。


急にガクンと体が動かなくなったのは、65km過ぎ。どこが痛いとかではなく、足全体に力が入らなくなった感じ。疲労感を通り越すと体ってこうなるのかと、自分でもびっくりするくらい足が前へ出なくなった。車道から歩道へ上る段差も辛い。足が上がる気がしない。アスファルトの小さな段差や窪みも妙に大きな障害に思えてくる。後ろから続々抜かれながら、なんとか止まるな止まるなと走り続ける。いや、動き続ける。実際、たまに競歩のような速足のような歩きのランナーにも何人にも抜かれた。


「もうすぐ“おしるこ”」の看板がところどころに見えて来て、これを励みに走りを続けるが、これがなかなか近付いてこない。おしるこはまだか〜と何度も心の中で叫びながら、ひたすら先のエイドステーションを目指す。


70km地点に大きなエイドステーション。ここで、そうめんやおしるこなどが供されていた。温かいおしるこ最高!


周りを見ると、もちろんまだまだ元気に走り出していく人もいるが、私同様すでに精魂尽き果てたように、座り込んだり寝転んだりして動けなさそうな人も多数。さすがにこれがウルトラの70kmってやつか。


エイドの先にまた別のテントがあり、「リタイアされる方はこちらでバスをお待ちください」と立て看板が出ている。この文句にかなり魅力を感じてしまうほどだったが、なんとか誘惑を振り切って、再び長い道のりに目を向ける。


70km通過、1:19:51。




この辺りに来て、ようやくガスが取れ、晴れ間が出てくる。「曇りのち晴れ」の予報通りだ。が、歩くに近いような走りになってしまっていたため、むしろ体が冷えて寒くなって来てしまう。ウィンドブレーカーだけは持って来て良かった。半袖シャツの上から薄手の長袖ウィンドブレーカーを羽織り、ちょうど良いくらい。とぼとぼと止まらないように頑張る。


なんとか歩かないように頑張っていたのだが、73kmくらいでついに足が止まり、歩きだしてしまう。またすぐに走り出し、数百m走っては止まり、の繰り返し。


この頃になると、大きな観光バスに収容されたリタイアorタイムアップのランナーたちが、横を通過していく光景を何回か見た。みんな窓に張り付いて精一杯手を振って応援してくれている。のだが、何やら手招きに思えてしまい、むしろ向こう側が幸せそうに見えてしまう自分がいた。いやいや、あの収容バスの中の人たちが満足なんてあるもんか。きっと悔しいに決まってる。あの人たちの応援に応えなければと、必死に自分の中の悪魔の囁きを振り払っていた。


霧が晴れたこともあり、サロマ湖の対岸にワッカ原生花園が見える。そのワッカの中に、左右双方向に蠢く人の列。あ〜、あれが噂に聞く80kmからのワッカか〜。速い人たちは、ワッカに辿りついただけでなく、もう復路を走っているんだな〜。


そう思うが、そのワッカがなかなか近付いて来ない。車用に「ワッカ 6km ←」みたいな交通標識があったりするが、この6kmが全然近付いて来ない。普段なら6kmなんてすぐなのに・・・。こんなにも走れないものかと、自分の不甲斐無さに落ち込んで来てしまう。




やっとの思いでワッカの入り口に到着。ここにもまた大きなエイドステーション。ここからは、細いワッカを約10kmの往復。ゴールは、このワッカ入り口から約 1.5km。リタイアするなら、ここで収容車を待つも良し、リタイアを申告してゴール地点まで帰るのも良し。ここでかなり真剣にワッカに入るかどうか悩んでしまうほど、体力的にも精神的にも限界だった。


この時、脳裏に浮かんだのは、北見のホテルで同室だったY氏だった。今年が3回目のサロマ挑戦とのことだが、過去2回はいずれも70kmで関門に引っ掛かり完走ならずで、今度こそはと意気込んで臨まれていた。私は、今現在80km手前まで来ている。そして、制限時間13時間を考えると、半分から3/4は歩いてもまだ時間内のゴールは可能なはず。走りたくても関門の時間制限に間に合わず、無念のリタイアになっている人もいる。怪我や故障が発生して走れなくなってしまった人もいるだろう。それなのに、時間にはまだ十分な余裕があるというのに、幸い怪我も酷い痛みもないというのに、もう疲れたからという理由でリタイアするなんてことがありえるのか?自分の後ろにはまだ数多くのランナーが頑張って走って来ている。ここでリタイアなんて、あまりに失礼だろ!


ここまで来たら、もう体力じゃない。足に力なんて全然残っていない。後は精神力のみ。行くしかない!



ワッカの入り口は、最初は高い木に囲まれた林道みたいな雰囲気。その中に80kmチェックポイントがあった。1:24:29


その林を抜けると、背の低い木々や草が覆い茂り、あちこちで花が咲き乱れる、美しいワッカ原生花園。湖と海の真ん中に突き出したようなワッカは、往路進行方向右側にオホーツク海、左側にサロマ湖が広がる、独特な光景。海と、湖と、一面の緑と花々と。本当なら、感嘆を上げるほど美しいんだろうなぁ〜。でも、美しいと感じる余裕はなく、頭の中にはRPGとかでラスボス直前にやけに澄み切った綺麗な神殿とかお城とか花畑とかが出てきて、逆に不気味な恐ろしさと緊張感をを感じる、そんな風景を連想してしまった。ワッカはその人によって天国にも地獄にも見えると言うが、この時の私にとっては間違いなく地獄の20kmの始まりだった。



先に出たホテル同室のY氏に、前日ウルトラの大変さを伺ったところ、「足に“ 来る”とねぇ、下りがきついんだよ、下りが。上りはなんとか小さく一歩一歩踏み出していけば登れる。下りは、足に衝撃が来て、とても走れないんだよ」とおっしゃっていた。くしくも、このワッカで、この言葉を十二分に体感することになった。確かに、上り坂はきついけど、歩いても走っても進める。下りは、足に力が入らないと、小さく踏み出すことすら出来ず、次の一歩が着地した瞬間に足全体や股関節に電気が走る。おそらく、元気な時なら坂と感じるほどの坂でも無いと思うのだが、そろそろと横歩きしながら坂を下らなければならなかった。で、またこのワッカが、原生花園だけあって、小さなアップダウンがたくさんある自然に富んだ地形なんだなぁ〜。正直、泣きそうだった。


エイドステーションでは、氷を山積みで置いてあるので、その度に両足をよ〜くアイシングして、足の感覚を麻痺させてからまた走り出す。この氷を取ろうにも体も足も曲げられず、しゃがめないから、スタッフの人に取ってもらっていたくらい。


そして、足が動かないから、推進力にと腕を一生懸命振りながら走っていたのだが、それも限界に来たようで、腕を振ると二の腕と胸筋がビキビキ引きつるようになって来た。全身バリバリ。


かろうじて指は動くので、このころ何人かから励ましの携帯メールが届いたのは実にありがたかった。なかなか全員に返信するだけの気力は無かったのだが、どのメールもとても励みになっていた。改めて、ありがとう!!


もう走るというほど走れないし、気を抜くと止まってしまうから、自分の中で「2分歩いて6分走る!」とルールを決め、この6分は何があっても根性で走り続け、2分間トボトボと歩き、を繰り返した。走ると言っても、早歩きの人にも抜かれるくらいのスピードでしか無かったのだが、全部歩くよりはマシというようなスピードだった。



ヘロヘロになりながら走っていると、途中で90kmのチェックポイントを発見。しかし、これは復路。往路はこの横を通り過ぎてさらに1.5kmくらい行ったところで折り返し。くっそ〜、ショートカットしたいぜ!(笑) しかし、当然と言えば当然かもしれないが、折り返しの突端のところにしっかりICチップ読み取りマットが敷かれていて、通過を確認していた。そりゃそうか。



目の前に近い目標が見えてくると、気分的にはちょっと楽になる。折り返しから先の90km地点までもヘロヘロと戻ってくる。1:30:41




で、ここで90kmの目標を過ぎてしまうと、後はフィニッシュまで10km。遠いなぁ〜。遥か彼方までまっすぐ伸びているワッカの原生花園が、果てしなく遠くまで続いているように見えた。


でも、後は帰るしかない!「2分歩き、6分走り」を何度となく繰り返し、下り坂では悲鳴を上げそうになりながら、1kmまた1kmと戻っていく。この時間になると、周りを走っている人たちもみな死屍累々といった雰囲気。日が少々西に傾いて来て、精神的にもめげる中、ゾンビの行進だった。私が6分走る間に抜かしたランナーが、2分歩きの間にヒョロヒョロと抜いていって、また私が追い付いて、みたいな状態で、お互いに声はかけないけど似たような顔ぶれを見ながら走る時間が続いた。


永遠に続くかと思われたワッカ原生花園も、高い木立が見えるとようやく終着点。林の入り口で2人スタッフが「もう残り4km切ってるよ!皆さん最後は良い笑顔で!」なんて声援してくれている。思わず、「笑顔なんて作る元気無いよ!」と返したが、「十分に良い笑顔ですよ!最後まで頑張って!」とさらに返された。


ワッカ入り口の林に入って景色が変わると、ようやく「これで完走出来る」という思いが沸いて来た。林の中を走って行くと、すでに80kmチェックポイントは撤収が始まっていた。そうか、ここをちゃんと時間内に通過して、今こうやって残り3kmを切ったところを走れている自分は幸せ者だと、思いがこみ上げてくる。


ワッカ入り口で、往路にも通った大きなエイドステーション。ここがゴール前最後のエイド。もう今更食べ物や飲み物は要らない。エイドのスタッフらが口々に「完走いけるよ!」「ラスト2km!頑張って!」「来年もまた来いよ!」なんて声援を飛ばしてくれるのが何よりの補給食。「後2kmが長いのやら短いのやら(^^;」なんて併走していたランナーと軽口を交わし、最後の市街地コースへ。


残り2kmと言われても、急に元気が沸いてくるわけでもない。やはり2分+6分を繰り返しながら、少しずつ少しずつゴールへ近付く。ゴールの常呂町スポーツセンターが見えてくると、急に沿道に応援の人が並び出す。自分の近くに青いゼッケンを付けたサロマンブルーの方が走っていて、その人に向けて「今年も完走おめでとう!」という声が飛んでいた。10回以上完走したことの証、サロマンブルーって、やっぱり凄いんだな〜。こんなこと毎年繰り返しているのか。でも、私もいつかあの青いゼッケンを付けてみたい、そんな思いすら頭の中を過ぎった。


ワッカから出た後続いて来た直線道路を折れて、スポーツセンターの敷地内に入ると、その先についに栄光のフィニッシュ・ゲートが。「写真を撮っていますから、最後は笑顔で!」なんて看板もあって、無茶言うなよと思いつつ、最後の力を振り絞ってガッツポーズ!!


フィニッシュ

ついにフィニッシュ! 手元の時計で11時間55分47秒。公式の大時計で11時間57分02秒。もうタイムなんかどうでも良いや。ゴール出来ただけでただただ感動。


ゴール後、完走メダルと記念タオルを首にかけてもらうのだが、思わず涙がこぼれかけた。


完走メダル
これがその完走メダル。


これまでフルは何度も完走しているし、ヘロヘロになってゴールしたレースも何度もあったが、それらと比べてもまた異次元の感慨があるね。この完走メダルは自分の大きな宝物になった。



ここで、ランナーズ・アップデートに出ていた速報タイム。

距離 (km) スプリット・タイム ラップ・タイム 通過時間
0 --:--:-- -:--:-- 05:01:13
10 00:57:07 0:55:54 05:57:07
20 01:51:44 0:54:37 06:51:44
30 02:51:02 0:59:18 07:51:02
40 03:52:20 1:01:18 08:52:20
50 04:54:18 1:01:58 09:54:18
60 06:10:31 1:16:13 11:10:31
70 07:30:22 1:19:51 12:30:22
80 08:54:51 1:24:29 13:54:51
90 10:25:32 1:30:41 15:25:32
100 11:57:02 1:31:30 16:57:02



以前、Junさんに聞いたところでは、「100kmウルトラを走るなら、前半と後半の50kmのタイム差を40分以内に抑えるのが、一番理想的で気持ちの良いレース展開。だけど、その差が1時間半以上あった人こそ、ある意味最もウルトラマラソンというのを味わいつくしたと言えるかもしれないね」と言っていた指導者がいたとか。私も、もちろん当初の目標では前後半の差を最小限に抑えて気持ち良く走り切るつもりだったんだけど、結果的には最大限ウルトラを堪能し尽くして帰ってくることになった。まぁ、今回が初ウルトラだし、これも良しか。ウルトラの楽しさも恐ろしさも十二分に味わったし、次回以降に大幅記録更新をする余地をたっぷり残したし、反省点もいっぱい見つけたし。


これだけ惨憺たる結果になった直後だというのに、是非また来年も出たい!という思いを新たにさせられた(笑) 次は、絶対にワッカを天国として走りたいぞ!




ゴール後、座るのもままならないほど足がパンパンで、着替えるのにも苦労したが、爽快な気分で帰り支度。北見市街地方面行きのバスの発車時刻が迫っており、それを逃すと次のバスは1時間後だったから、会場内を見て回る余裕も無くそそくさとバスでホテルまで引き上げた。


himeさんやしぶままさんらがねぎらいのFAXを送っていてくれたはずなんだけど、見る時間が無くてごめんなさい(T_T)



ホテルに帰り付いたら、椅子に座りこむなり、しばらくホケ〜ッと何もせずに呆けてしまった。これはイカンと気を取り直し、シャワーを浴びようとしたのだが、今度は足が上がらなくてバスタブを越えられない。うはぁ、ここまでダメージあるとは(^^;


なんとかシャワーを浴び、すっきりしたところで、ホテルの中のレストランで夕食。同室のYさんがまだ戻って来ておらず心配だったが、いつ戻って来られるか分からなかったし、先に食べ始めてしまうことにした。さすがは大勢のウルトラ参加者を抱えるホテル、毎年のことで慣れているのかもしれないが、ランナーのことを良く分かっている。前日の晩や当日早朝は、炭水化物中心で肉系は少なかったのだが、当日夕食は北海道ならではの肉類や魚介類がふんだんに。残念ながらビール呑んだらひっくり返ってしまいそうだったので注文しなかったが、気持ち良さそうに乾杯している人たちもいた。いや〜、美味かった!


ここで、最終のバスに乗ってYさんが帰還。どうでした?と尋ねると、黙ってジャージの胸元のジッパーを開き、首にかかった完走メダルを笑顔で見せてくれた。それだけで言いたいことは全て伝わった。お互い固い握手を交わした。後で聞いたら、70km関門を通過したのが制限時間15分ほど前、80kmを4〜5分前、90kmも4分くらい前にギリギリで通過し、最後は12時間47分でのフィニッシュだったとか。見事三度目の正直。13時間の制限時間を目一杯味わい尽くしたのだろう。


Yさんが90km関門をなんとか通過した時、まだ往路にも何人ものランナーがいて、「後4分です!」のアナウンスを聞いて、その辺のみんなでお互いに「お疲れさまでした」と言い合っていたのが印象的だったそうだ。90km関門は、目に見えても、折り返し地点はまだそこから1.5km先で、その時間ではどうやっても間に合わないからね。でも、そこでタイムアップになってもお互いの健闘を称えあうランナーたち、それを見て最後の力を振り絞ってフィニッシュまで帰って来たYさん、どちらも素晴らしい。



お互いに思い出などを語り合いながら夕食を取り、翌日の帰京のために荷造りをしたら、もうダメとばかりに夕方9時頃には布団に入って寝てしまった。長かった、けど充実しまくった一日が、ようやく終わった。





泣いて笑ってウルトラマラソン
    
メロスたちの夏
    
09'SS asics(アシックス)サロマLSD9 【UNISEX】 TJR608
posted by ∴∵ at 18:37| 東京 曇り| Comment(8) | TrackBack(0) | ランニングログ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お疲れさま。そして完走おめでとう。
いや、ホントすごいや。
無念にも走りきれなかった方々にもエールを :-)
Posted by 101 at 2009年06月30日 21:34
お疲れ様でした。完走おめでとう! FAXは2部作で、後編も見て欲しかったなぁ・・
Posted by しぶまま at 2009年07月01日 05:28
∴∵さんのことだから、あっさりとサブ10達成してしまうかと思っていましたが...
ウルトラは奥が深いですね。そこが病み付きになってしまうのでしょうか?
でも最後まで折れなかったのは立派です。
ゴール後の感動も文面から十二分に伝わってきましたよ。
本当にお疲れ様でした。そして完走おめでとうございます!


Posted by 雪ん子 at 2009年07月01日 10:34
完走おめでとうございます!

感動しました(T_T)
Posted by コサク at 2009年07月01日 14:38
> 101 さま
完走率は例年70%くらいですからね〜。3千人近く参加しても、900人くらいは完走出来ない計算になります。完走はそれだけ勲章ですね。
この大会では、「完走賞」では無く、全ての参加者に敬意を表して「参加賞」になっているのも素敵でした。

> しぶまま さま
なに〜、そうだったんですか〜!すいません、見たかった!

> 雪ん子 さま
私もサブテンは行けると思っていたんですが(^^; 過信だったようです。また挑戦しますよ。

> コサク さま
ありがとうございます。自分でも書いていて思い出し泣きしそうでした。
Posted by ∴∵ at 2009年07月01日 21:02
感動した〜(T_T)本当にお疲れ様でした。
ウルトラは長いけどそれだけ大きいものがあるよね。
私も来年サロマに行きたいと思っていますので、色々教えてね!
もう少しゆっくり休んでね〜!!
そしてまた明日にGOだね!
Posted by かおちん at 2009年07月02日 10:23
ゆっくり読ませていただきました。
改めて完走おめでとうございます(^O^)/

ウルウル・・・ウルトラの世界、スタートまでの準備と移動、早起き(朝ごはんが夜中(@_@;))などで疲れちゃいそうです。

でも、それを乗り越え、スタートして、それからの試練を乗り越えてのゴールだからこそ、フルとは比べモノにならないほどの感動と達成感があるのでしょうね。

前日の半生ほたてがお腹にこなくて本当によかったよかった(^_-)-☆
Posted by かおる at 2009年07月02日 15:22
> かおちん さま
感動も大きかったですよ〜。来年は一緒に行きましょう♪

> かおる さま
いろいろ疲れる要素があるんですよね〜。そういうのも含めてレースですね。
Posted by ∴∵ at 2009年07月02日 20:42
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