2008年06月19日

骨髄移植ドナーコーディネートの悩みと結末

6月初めのある日、帰って来たら、郵便ポストにオレンジ色の大きな封筒が入っていた。表書きに「重要」「親展」の朱書きと「大切なお知らせです。至急開封してください。」の文字が。そして、送り主に「(財)骨髄移植推進財団」と大書されている。

こ、これは、まさか・・・。


ちょっと動揺するのを抑えながら中を開封すると、
骨髄ドナーコーディネートのお知らせ
この度、貴方様と骨髄バンクの登録患者さんのHLA型(白血球の型)が一致し、ドナー候補者のおひとりに選ばれました。そこで、今後、骨髄提供に向けて、さらに詳しい検査や面談に進んでいただけるかどうかをお伺いしたく、連絡させていただきました。
骨髄提供にご協力いただくには、貴方様のお気持ちに加え健康であること、まった家族の理解と同意が必要です。
つきましては、同封の説明書を参考によくお考えいただき、返信用紙にご記入の上、○○○○年△△月□□日頃までにご返送ください。

うわ、確かに以前自ら進んで骨髄バンクへの登録はしたけど、あれから1年半何も無かったので、やはり骨髄バンクにドナー登録しても実際にドナーになるのは確率少ないのかなぁと、気にしていなかった。

でも、この通知でいきなり目の前の現実の問題として突きつけられた。

やはり、まったく不安が無いと言えば嘘になる。
一番は、「全身麻酔」について。麻酔によるリスクとか、全身麻酔をかければ本当に痛くないのかとか。局所麻酔はあまり効いた事がないし。
それから、どれくらい前からランニング禁止になるのか、どれくらいでランニングに復帰出来るのか。
また、私は痛みに強いというか痛みに鈍いので、術後痛みをあまり感じなかった場合、もう動いても大丈夫なのかどうか、痛み以外に検査指標とかはあるのか?
仕事柄休むことは難しくなさそうだが、生き物の管理は若干不安でもある。

私自身も、すぐに「是非やりたい!」と言えるまでの心の準備は出来なかった。


また、同時に、家族の同意も必要。私の場合は未婚なので、親の同意ということになる。それで、週末に両親と一緒に夕食を取った機会に、パンフレットを見せて事情を説明。以前に骨髄バンクにドナー登録した時も、母は後遺症などのリスクを考えて否定的だったが、骨髄提供が現実的なものとして突きつけられるとさらに渋い顔。父は「お前の考えを尊重するよ」と言ってくれたが、母は「パンフレットをじっくり読んでみる」と厳しい顔で言うに止まった。

骨髄移植は、決して楽なものではない。リスクが無いというのは嘘になる。でも、私が逆に安心したのは、骨髄バンクから送られてきたパンフレットには、これまでの全身麻酔や骨髄提供で起きた後遺症の事例や数などが客観的なデータとして細かく記載されていたこと。年間1,000件近い骨髄提供手術が行われており、その中の何%くらいが何日で退院したとか何日で日常生活に戻れたとかがグラフで示されている。自分が理系だからということもあるのだろうか、隠し事無くこうやってデータを示されると、骨髄バンクに信頼感を得られた。

とりあえず、母には1週間後に意見を聞きたいからそれまでにパンフレットを良く読んで考えをまとめておいてと伝えた。


また、統計的なデータも役に立つけど、後遺症や痛みの問題など、個別の人の体験記を読むとより現実の物として感じられるかも。

術後の痛みの件もそうだし、やはり家族から不安・反対の声があったという例も少なくないし、こういう個別の実例を読んでみるのも役に立つと思う。それで、いくつかのサイトで体験談を片っ端から読んでみた。

見知らぬあなたへ 〜骨髄移植体験記〜

骨髄バンク ドナーの輪

痛みはやっぱり人によって結構違うみたいで、その日からほとんどもう痛まなかった人から、一箇月くらい痛みが続いた人もいるみたいだし。

大概の人が痛いというのは、むしろ麻酔前の注射と、術後の導尿カテーテルを抜く時。実際の手術は、全身麻酔で完全に眠っているから、気が付いたらもう終わっている、という感じみたい。この辺が分かっていると、安心出来る。どういう手順で、いつどんな痛みがあり得るのか、体験談を読んで知っているとある程度落ち着けるかも。

だいたい、1週間もすれば痛みはほぼ無くなって“日常生活を送るのに支障はなくなる”というのは、統計データからも個別体験記からも読み取れる。


ただ、いつから”ランニング・マラソンを再開出来るか”なんて稀有な事例はさすがになかなか載っていないね(笑) 最終決定からしばらくは激しい運動も禁止されるみたいだし、それが結構辛かったりして。
donorsnet|骨髄バンクQ&A Q8
以前、採取入院の前日にマラソン大会に出場したという人がいて、入院して検査してみたら、そのままで麻酔を受けると危険かもしれないという結果が出ました。この方の場合は体質的な問題ではなく、激しい運動による一時的な変化だということがはっきりしていたので、採取を遅らせて対応しました。
しかし、採取が遅れると今度は提供を受ける患者さんのほうが危険になってしまいます。ですから、激しいスポーツは骨髄採取の前は控えていただくようにしています。

基本的には、骨髄採取前にはしばらく“激しいスポーツ”は控えるように言われるらしいし、提供後も1箇月くらいはマラソンなど負荷の大きいスポーツは禁止みたい。う〜ん、そうすると都合1箇月半〜2箇月くらいはランニング出来なくなるのか?体力的に落ちてしまうのも嫌だが、精神的に走りたくてウズウズしそう。
コーディネートが始まってから実際に提供するまで、患者さんの体調も見極めて、3箇月〜5箇月くらいかかるみたい。そうすると、今の時点では初夏だから市民マラソンはオフ・シーズンだが、半年後というと本格的な来シーズンのマラソン・シーズンが始まる頃になる。う〜ん、そうすると10月とか11月の開幕戦は見送りになる公算か?最近はマラソン・ブームでどこのレースでも申込者が増加して定員締め切りが早まっているから、10月とか11月のレースはもう6月とか7月にはエントリしなくてはならないのだが、骨髄提供の時期が決まるまで申し込みは出来ないなぁ。
ここだけは、なるべく早い内に提供時期が決まって欲しいなぁ。

ただ、こんなつわものも発見。
2008かすみがうらマラソン: ダメブロ
確な日付等を言うのはルール違反なのでしませんが,今回,骨髄提供からまだ1ヶ月が経っておりません。医師に相談すればやめろと言うに決まってます。
提供から1ヶ月は派手なことはやめてくれということになっているのですね。骨髄が再生するまでに1ヶ月ぐらいかかるらしい。
しかし私は元気だ。
骨髄採取から1ヶ月も経たずに,フルマラソンという極端なことをやり遂げれば,骨髄採取が事後,ドナーの健康を害することは無いという証明になりはしないかと。
そして今回,私は普通に完走できました。

ただでさえ骨髄バンクに登録した中から実際に骨髄ドナーになる確率はせいぜい1/50程度と言われているのに、この人は非常にまれな2回の骨髄提供をされた方。しかも、2回目の提供から1箇月以内にフルマラソンを完走されている。
練習不足になってしまうのは避けられないけど、一応術後1箇月すればマラソン出場も可能そうだというので希望が沸いて来た。

ただ、術前術後の“激しい運動”禁止期間は、どれくらいの運動が“激しい運動”なんだろうね?(笑)さすがに、タイムを狙うようなレース出場は“激しい運動”としても、5kmや10km程度のゆっくりのジョグなら私にとってはとても“軽いエクササイズ”なんだけど、やっぱり一般的には“激しい運動”かなぁ?医学的にはどうなんだろうね?コーディネーターや医者に聞いてみたいけど、やっぱり「走るな」って言われるだろうなぁ(^^;

とりあえず、今回「提供する意思がある」と返事をしても、健康診断やら問診やらコーディネーターとの相談やらがあって、その上でようやく最終確認に進む可能性がある、というくらい。疑問点はいろいろコーディネーターさんや専門医さんにぶつけてみたいな。


骨髄コーディネーターに送った質問・疑問点
1.どれくらいが“激しい運動”?

術前の事前検査や術後1箇月くらいは“激しい運動”が禁止されるとパンフレットに記載されていました。私はランニング・マラソンを趣味にしており、日常的にランニングをしています。記録を狙って全力で走るようなマラソン・レースはさすがに問題外としても、私にとっては5〜10km程度をゆっくり走るジョギングは“軽いエクササイズ”です。でも、一般的にはやっぱり激しい運動に入るでしょうね?医学的な基準はあるのでしょうか?


2.提供時期はいつ頃決まる?

現在はマラソンはシーズン・オフですが、10〜11月くらいから本格的な市民マラソン・シーズンが始まります。この季節にマラソン大会に出場するのを楽しみにしています。趣味のことですし、他の大会や翌年以降もありますし、その時期の大会に出られなくなっても固執することではありませんが、出られるかどうかは早い内に分かると良いなと思います。最近のマラソン・ブームのため、どこのマラソン大会も定員締め切りが早まり、申し込みは実際のレースの3〜6箇月前には行わなくてはならないのが現状です。申し込みの際には参加料を前もって払い込む必要があり、参加者の都合によるキャンセルでは返金されません。いつ頃の時期のマラソン大会には出られる/出られないのかが分かると、申し込みが出来て目標と楽しみが持てます。


3.術後日常生活や運動が出来るようになる指標は、「痛み」の有無以外に客観的な検査項目がある?

インターネットで骨髄提供体験談を読むと、術後の腰の痛みやそれが続く日数は人によって様々なようです。送っていただいた統計データでも「日常生活に復帰できるまでに要した日数」や「痛みが残った日数」などが載っていました。この場合、本人の感じる「痛み」以外に、日常生活に戻ったり運動を再開して大丈夫かどうかを判断する医学的指標はあるのでしょうか?
というのも、私は良く言えば痛みに強い、悪く言えば痛みに鈍いようです。以前に虫歯だったり足に膿が溜まって切開した時なども、痛みを感じて病院にいくと「もうだいぶ前から痛かったはずだが」と医者に言われるようなことがありました。本人はその日くらいにようやく痛みを感じていたのですが。鈍く続くような痛みには強いようです。
そんなわけで、骨髄提供手術後も、もしかすると意外と腰の痛みはキツくないかもという期待がある一方、自分で痛みをあまり感じないと過剰に安心して無理してしまいかねません。自分の痛みに対する感覚には自分で信頼が無いので、客観的な指標があると安心出来ます。


4.全身麻酔がちゃんと効くかどうかは事前の検査で分かる?

先の虫歯や足の膿の切開洗浄手術では局部麻酔をしましたが、麻酔が効きにくいようで、手術中はかなり痛みを感じました。局部麻酔と全身麻酔の仕組みや効き方の違いは知りませんが、全身麻酔は確実に効くのでしょうか?効くかどうかは事前検査でしっかり分かるのでしょうか?さすがに手術中に意識が残ったり痛みを感じたりするのは嫌ですし。





かなり真剣に悩んで、なんとか両親にも同意を貰い、ドキドキしながら「提供の意思あり」の返事を送ったのだが、その4日後、残念ながら「コーディネート終了のお知らせ」が到着。患者さんの都合による終了だそうだが、
患者さんの都合による主な終了理由
  • HLA (DNA) が不一致のとき
  • 他のドナー候補者の方が骨髄採取の運びとなったとき
  • 患者さんの病状変化等により治療方針が変更、または骨髄移植を見合わせることになったとき
など
だって。
患者さんの容態が悪化したのが理由でなければ良いけど。

案外、上に書いたように質問細々たくさん書き過ぎたかな(笑)


残念だけど、もしまた提供依頼が来たら、今度も賛同したいな。




本田美奈子/アメイジング・グレイス(DVD付)
 
骨髄移植推進財団 リボンマグネット
 
プロジェクトX 挑戦者たち 第IV期 第8巻 決断 命の一滴 〜白血病・日本初の骨髄バンク〜
posted by ∴∵ at 20:52| 東京 曇り| Comment(7) | TrackBack(2) | 日記・雑記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
凄〜い!
私も骨髄バンクのパンフレットを目にして、「ランニングのおかげで健康になった」ことで何か人の約に立ちたいと思い、骨髄バンクのパンフレットを目にしましたが、この1年間、何も行動に移せずにいます。
昔、盲腸で全身麻酔とバルーンを経験して、「もう、アレだけは勘弁」と思うくらいですので、さらに踏ん切りがつかなくなりそうです。
でも、「勝負レースに出れないこと」と引換にでも「どなたかの尊い命が救える」ことを比較すれば、後者の方が大事だと思います。
私も、もう一度、真剣に考えてみようかな〜と心を動かされました。
Posted by hiddie at 2008年06月20日 00:09
> hiddie さま
そう、健康だからこそ出来る貢献ってあると思うんですよね。
献血なら簡単なんですけど、骨髄提供はドナー側にも負担が大きいので、なかなか悩ましいのですが。
Posted by ∴∵ at 2008年06月20日 07:11
骨髄提供はすごくドナー側にとってすごく大きな事で、簡単にやるとは言えない所はあると思いますが、∴∵さんのお話しを呼んで、やっぱり健康であって、骨髄によって誰かの命が助かり、しかも骨髄適合はすごく低い確率らしいし、現在骨髄を欲してる人との骨髄が適合したならば、それは提供する事が運命なんだろうなぁって思います。
私もhiddieさんと同じく真剣に登録を考えようと思っています。∴∵さん、こういう事を考える機会をくれてありがとう^0^
Posted by かおちん at 2008年06月20日 17:58
>∴∵ さん
これ真剣に悩みますね。カテも入れることらしいので全麻は体に負担かかってやっぱりきついと思いますよ。(私は麻酔の注射が大嫌いです。痛くて。痛くて。)でも、でも、せっかく白血球の型が合う方がいらして∴∵ さんのお陰で助かる命があるとしたら・・。参考のURLを見ましたがまだ骨髄移植の問題あるようですね。私は骨髄を提供したからにはやはり患者さんその後の状況等の情報がほしいです。なんでもいい。今元気です。とか単純なことを・・。それを望むのは普通の人の心理かな・・と思います。今回のことは見送られたみたいですが。人の為に行動しようと思った∴∵ さん尊敬します。私は・・もし子供が生まれる機会があったらさい帯血をしよーかと思ってます。
Posted by suika at 2008年06月20日 19:27
> かおちん さま
そう、今回は結局直接的な骨髄ドナーにはなりませんでしたが、こういう記事を通じて間接的にでもお役に立てればと思って載せました。


> suika さま
そう、私は全身麻酔もカテーテルも経験が無いので、怖さというか不安が無いわけではありません。
骨髄提供をした場合、患者さんと会ったり自分を特定できるような個人情報を教えることは出来ませんが、2回まで手紙をやり取り出来るそうですよ。患者さんにとって義務ではないので、患者さん側から手紙が貰えるかどうか確約はありませんが。
Posted by ∴∵ at 2008年06月20日 21:36
やはり、相当悩むものなのでしょうね。
私なんかは、献血だって今までに2回しかしたことが無いくらいですからね。
Posted by かわせみ at 2008年06月24日 21:45
> かわせみ さま
体への負担・リスクは大きいですからねぇ。
献血なら気軽に出来るので、時間があったらぜひまた挑戦してみてくださいな。私は良く行っていますよ。
Posted by ∴∵ at 2008年06月26日 07:19
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